先だってはネット上に転がっていた不確かな情報で話をしてしまったが、ついに公式にその詳細がリリースされた。
>2005 Honda CBR600RR外観上のイメージについては大きな変更はない。エアダクトがカウルのセンターに移設されたことで、よりラムエアの効果を高めるのに合わせて、同型のMotoGPマシン、RC211Vイメージをより強く打ち出そうとしていることが伺える(が、これは僕に言わせればホンダのフラッグシップであるCBR1000RRのイメージ的な傘下に単に収まったものとしか思えないのだが)。シルエットとしては、現行型に大きく違えるものではない。
一方、採用されているイクイップメントについては、微に入り細に入り変更が加えられている。総合的に見て、これはマイナーチェンジ、ビッグマイナーを越えて、フルモデルチェンジに等しい内容であると言えるだろう。
何よりも大きいのは、車重の大幅な軽量化である。乾燥重量で163kgというのは、現行機の171kgに比べてなんと8kgもの減量を果たしている。
クルマと違って固体容積の小さいバイクでこれだけの軽量化というのはただごとではない。
別所にあったプレスリリースを見ると、軽量化の内訳は、マフラーで1.4kg、シャシー(フレーム)で1.5kg、シートレールで0.7kg。その他エンジン、リアスイングアームetcを合計してそれだけの重量を軽減させたらしい。これまでが無駄に重かったと言われてしまえばそれまでだが、しかしこれはにわかには信じがたいレベルの軽量化である。
また、イクイップメントの変更に合わせて見た目上の変化もあって、なにより(みなさんお待ちかねの!)倒立フロントフォークがついに採用された。ただ、これはプレスリリースを見ると非常に微妙な物言いでその採用に至る経緯が書かれている。ポイントとしては、現行の正立でもレース等ではなんら問題なく高いパフォーマンスを発揮しているが、要は市場の要請(倒立の方が見た目の商品価値が上がる)と、あえて理由を付けるとラジアルマウントのブレーキキャリパーが、倒立化によって採用できるから、とあった。そう、別段正立で剛性云々が足らずに倒立化、という表記はどこにも見あたらないのである。これはホンダの開発と販売双方の、本音と建て前が垣間見えて面白い。
しかし、である。倒立化と軽量化、この二大変更点に関しては、僕としては大きな矛盾点を感じざるを得ない。
倒立フォークは一般的に正立よりも高剛性であり、高い荷重域でその真価を発揮するものであり、それはすなわち、フォークが取り付けられているシャシー(フレーム)にもこれまでより大きな負担を要求するものである。
しかし今回のモデルチェンジで、同機は基本的には同型のフレームにおいて1kgを越える軽量化を行っている。これは独自の鍛造技術によって成型されたアルミフレームの肉厚を削ることによって達成しているのだそうだ。
ホンダの言い分では、「不必要なところの」フレームの厚みを減らし、「強度を落とすことなく」それだけの軽量化を行ったということであるが、常識的に考えて、強度と重量というのは概ね比例関係を持つものであり、それに合わせてフォークの倒立化による強度要請というものに、果たしてどこまで現実的な対応を果たしているものなのか、これは非常に興味深いポイントである。
イメージしてみて欲しい。アルミ1.5kgの固まりを。これが発揮するであろう剛性を。フレームの補強(筋交いなり溶接なり)が別に入っているならまだしも、単に肉厚を削ってこれだけの質量が保持していた強度を補わせるというのはどのようなマジックを使っているのだろう。
なにより僕は、現行機のフレームですら
強度不足ではないかと考えているのである。
ホンダの言う、フレックスシャシー(コーナリング時、フレームが弾性変形することでコーナリングフォースを稼ぎ出す)の概念というのは、これは実物に乗って感じたのだが、僕は机上の理想論ではないかと思うのだ。
確かにフレームが適度に変形することで、タイヤのキャンバー/スリップアングルを変化させ、コーナリング性能を高めることができるというのは事実であろう。実際、そのコンセプトで作られている現行のCBRは、フレームをしならせることで強烈に曲がる、独特のコーナリング性能を獲得することに成功している。
しかし、これは僕は考え方として基本的に間違っているのではないかと思うのである。
なによりシャシーが変形することで問題となるのが、サスペンションが所定の設計性能を発揮できなくなるだろうことである。ちょっと考えてみても、前後サスペンションの取り付け上下のいずれかは必ずフレームに繋がっているわけで、それが動いてしまうということは、煽動部のよじれやねじれが常に発生するものになってしまう。そうなった場合はサスペンションとして想定されるダンピングなりスプリングの動きがどこかしら必ず阻害されるものになるはずである。
そして、もうひとつはアライメントの問題である。
シャシーがしなることで、それが「常に良い方向に」働くとは限らない。これは実際に現行のCBRに乗っていて感じることであるが、かかる荷重や路面のアンジュレーションの変化で、露骨に旋回性が変化してしまう。特に一般道にありがちな、路面のうねりや継ぎ目にコーナリング中にマシンが乗ってしまったときに、急激にマシンが曲がったり、あるいはその逆に曲がらなくなったりする傾向があるのだ。これにはかなりの慣れを要する。
このフレックスシャシーが真価を発揮するのは、あらかじめコーナーの曲率なり路面状況なりが察知できるコースにおいてのみであろう。そう、それはすなわちサーキットである。
サーキットのように、あらかじめ各コーナーでどれくらいの旋回荷重がマシンにかかり、その時にどれくらい(シャシーが、そしてマシンが)曲がるかが判っていれば、このフレックスシャシーのもたらす旋回性の向上というのにも対応ができるだろう。しかし一般道ではそうはいかない。路面は日毎に変わるし、常に一定のラインで走れるものではないからだ。
*蛇足であるが、例のユニットプロリンクも一般道に向かないサスである。すでに長文なので詳細は割愛するが、このサスに採用されている奇妙なリンク構造のせいで、瞬間的な荷重変化が起こると、サスそのものがリジットになってしまう(伸圧双方)。これも路面変化の激しい公道でのライディングの対応が難しい部分である。
せっかくの高剛性を発揮するアルミフレームを、わざわざ曲がるようにして強度を設計する?確かに高度な技術であるが、僕はこれは一過性のトレンドみたいなもので、早々にまた完全剛体への道に戻るにではないかと思っている。
鉄フレームの時代がまた戻って来るというのなら話は別であるが。
なにはともあれ、新型の真価は走らせてみないと分からない。もちろん微細に採用された新技術によって、確実にポテンシャルアップが図られているものになっているだろう。しかし基本的には、現行型のコンセプトをより一層発展させたものである。それを軽量化と倒立サス化で具現化を図っている(と僕は理解した)のである。
正直、買って一年も経たずに新型がリリースされたのは内心忸怩たるものはあるが、ここまで書いてきたことを読んで分かるように、僕はこのCBR600RRというバイクが打ち出しているコンセプトそのものにいささか大きな疑念を抱いている。高性能を達成するには様々な方法があるが、そこで採用される技術、あるいは設計的な思想・哲学というものが、このバイクにおいては、あくまで僕の視点からみて、理想と現実が乖離している印象が拭えない。あまりに高尚な設計思想に、それを操るライダーの存在が置き去りにされている感があるのである。
まずはバイクの求める走り方にライダーが合わせること。妥協はなしで。
たぶん、おそらくであるが、新型ではより一層、その傾向に拍車がかかっているのではないかと僕は感じている。
果たして。